2009年9月30日水曜日

波は、渦に

先日「タイ人の血液型」というタイトルの記事で紹介した「Sweet Vacation」という二人組アーティストによる、ちょっと風変わりなイベントに参加した。

さて、前回の記事「ついったー小説」にてTwitterというサービスについて紹介したのだが、今回のイベントはSweet Vacationの公式Twitterアカウント、もしくはサウンドプロデューサーのDaichi氏のアカウントをフォローしているユーザーのみが参加できるイベントだったのである。

会場には無線LAN環境が用意され、PCや携帯情報端末によってインターネットへのアクセスが可能となっていた。
当然ながら参加者は全員Twitterのアカウントを持っているわけであり、Twitterを利用した会場内外でのコミュニケーションのということを意図したイベントであった。
おそらくこうした試みは、少なくとも音楽イベントとしては日本初だったのではないだろうか。

イベント当日は、#swpというハッシュタグ(※「ついったー小説」の記事を参照)をつけた発言が、会場壁面に投影されたPC画面上に表示される仕組みとなっていた。
このタグを用いて、会場のファンは曲の感想や今の気分などを自由につぶやいたり、他の参加者のつぶやきに反応したり、Daichi氏やスタッフのつぶやきを見たりすることができた。
そんななか、会場に用意されたキーマカレーが、誰かのつぶやきをきっかけに大評判となって、早々に売切れてしまったりということも起きたりしたのだった。

当日会場に来ることができなかったファンも、このハッシュタグを用いることによって、会場外からイベントの様子を垣間見たりすることが出来たようである。

同時に#svqというタグが用意されていた。
こちらは事前にSweet Vacationへの質問を投稿しておくためのタグである。
イベントの中でポッドキャストの番組「Sweet Vacation Radio」の公開収録が行われ、そこでこれらの質問への回答が行われたのである。

私はイベントに途中から参加、途中で退出ということになってしまったが、持ち込んだモバイルPCの画面からTwitterへアクセスし、会場内外から発信され、流れてゆく言葉を見ながら、不思議な高揚感に浸ることができた。

言葉による空間を越えたゆるやかなつながりと、空間をふるわせる音楽による緊密なつながり。
ふたつの波が、少しだけ摂取したアルコールによって溶融した頭のなかに渦をつくる。
そんなこんなで気持ちよくなってしまって、ヘンテコな短歌をつぶやいてしまったり……。

目玉となるSweet Vacationのライブでは、新曲が初披露された。
その最中にDaichi氏が、演奏しながら画面に表示されるつぶやきを懸命に追っていたのに興味をおぼえた。
作品への反応が非常に気になるという様子で、その気持ちには非常に共感する。

さて、このような、インターネットを活用したインタラクティブな形式のイベントが、俳句関連のシンポジウムなどでも実現できないものか、などと想像してみた。
技術的にはさほど困難でもなく、無線LAN環境とPC、プロジェクターなどがあれば可能だろう。

壇上のパネリストの発言に対しての突っ込みや共感、質問などが次々と画面を流れてゆく、またパネリストがそれに対して応答したりなど、スリリングな展開が見られるのではないだろうか。
また、会場外からもその雰囲気を覗き見ることができて、なかなか楽しめるイベントになりそうだ。

俳人たちがこぞってモバイルPCやiPhoneを手にしている状況というのは、なかなか想像しにくいものではあるが。

引く波の渦を残せり秋彼岸   中村安伸

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