2014年11月3日月曜日

第一回「あらくれ句会」のお知らせ

色鳥や全身窓のやうに待つ   中村安伸

「豈」55号に寄せた「すべての俳句は不可解である」という文章で、俳句作品の制作を封印したことを書きました。
いろいろあっていつのまにか実作に戻った私ですが、いまのところ、以前ほど自分の向きあっているものへの確信を持てずにおります。手放したものをひとつひとつ拾い上げる過程なのかもしれませんし、以前持っていたつもりでいたのはただの勘違いだったのかもしれません。
ともかく今まで掴んできたと思っていたものをチャラにして、つかまえなおしてみたい。
そして、何をやるべきか、何を求められているかなどとは考えず、ただ自分のやりたいことやろうと思ったのでした。

ひとつは句集をまとめること、これについてはまた詳しく書きたいと思いますが、ひとことで言うと、自分の過去の作品を世界に置き去りにしてもいいと思えたということでしょうか。

もうひとつが句会をはじめること。
実は自分が世話役になって句会を行ったことがほとんどありません。これまでなんの気なしにいろんな句会に出席してきましたが、世話役の方々の苦労はいかばかりであったか、ようやくそのことに思いが至った次第。
それはともかく、単に句会をはじめるということではなく、今回の会場である足立区小台のBRÜCKEというお店(カフェではなく珈琲屋だということですが)で行うということが、私にとって重要です。
店主の杉浦さんは、本格的な珈琲を淹れたり、自分の気になるアーティストを呼んできてライブを行ったり、フリーペーパーを作ったり、そのようなことのすべてを、なによりこの小台という土地で行うことを大切にしているように見えます。
自分からどこかへ出かけていくことも必要でしょうが、縁あって住まいをもうけたこの土地を拠点とし、人を呼ぶ、迎えるということをしたいと思いました。そこでこのお店をお借りすることにしたわけです。荒川と隅田川という二つの河に挟まれた、狭い、特別なものはなにもない土地ですが。

そして、新しくはじめる句会を「あらくれ句会」と名づけることにしました。
この名は徳田秋声の『あらくれ』という小説にちなむものです。小説の冒頭近く、主人公のお島が養家へ預けられるとき、父に伴われて隅田川(当時は荒川)の「尾久の渡し」付近を通る描写があります。(これについてはBRÜCKEに置かれているフリーペーパー「小台マガジン」第二号に少しばかり書きました。)
かつてこの渡し場があった付近に架けられているのが現在の小台橋であり、ドイツ語で橋を意味するBRÜCKEという店名はこの橋から採られたものです。

生理的嫌悪を原動力にしたお島と同じではありませんが、理想や志ではなく、ただこのお店で句会をやってみたいという気持ちのみを元手に、ともかくもスタートしてみたいと思いました。
そして、この小台という土地に打ち込んだ一本の杭に、いろんな人のさまざまな思いが、色とりどりのリボンのように結び付けられていくのを、それがふたつの河を渡ってきた風をはらんで、千切れんばかりにはためくのを見たいと思います。

◆第一回「あらくれ句会」

・日時:2014年11月28日(金)19時開始予定

・会場:BRÜCKE
 都電荒川線: 小台で下車。北に徒歩10分。
 日暮里・舎人線: 足立小台駅下車。隅田川沿いに徒歩10分。
 都バス:「東43 荒川土手行き」小台橋で下車。徒歩1分。

・参加費:無料(1オーダーお願いします。)見学可。

・二句(うち一句は兼題「凩(木枯らし等、表記自由)」を詠み込んでいただきます。)
を11月27日(木)までにメールにてお送りください。

・当日席題句を一句投句いただきます。
なお、席題は19時すぎにTwitter等でも発表しますので、遅れる方はそちらを参照してください。

・参加申し込み:こちらのリンクより、中村まで予約メールをお送りください。
詳細を折り返しメールにてお知らせいたします。