2014年12月7日日曜日

「あらくれ句会」第一回レポート+第二回のおしらせ


冬の虹すなはち空の歪みかな   中村安伸

句会の主催者、世話人のするべきことといえばだいたい以下のようことで、とりわけ困難なことではない。
日時、場所を決めて確保し、告知し、参加者を募る。
当日の段取りを決め、必要に応じて周知する。
配布するなんとか用紙を準備する。
当日は司会進行や雑事への対応をするなど。

はじめて自分が一人だけで世話人をつとめる句会を前に、上記のような作業を行いながら、なんとなく落ち着かない気分になっていた。
はたして私と一緒に句会をやってみたいと思ってくれる人がいるだろうか……。
そんな審判にさらされているような気分があったのかもしれない。

また、足立区小台は、必ずしも不便ではないが、名前すら聞いたことがない人も多いマイナーな土地である。そのために二の足を踏む人もいたかもしれない。しかし、一度来てくれた人にとっては馴染みの場所となるだろう。

Twitterやメールで執拗に宣伝したこともあって、煙たがられつつ(?)も7人の方々から参加表明をいただくことができた。そして、当日も全員が出席してくださり、私と店主の杉浦さんをふくめた9人での句会を無事行うことができた。

今回の参加者7人は、句歴の長短はあれどみなさん俳句、句会の経験者である。ただ経験者というだけではなく、それぞれにかけがえのない個性と経験をもつメンバーにご参加いただけたとおもう。

それにしても、当日の句はもちろん、参加者のお名前も出さずにレポートを書くというのはもどかしいものだ。(ちなみに表題の句は当日私が投句したもののひとつである。)

私の知る俳人の方々はみな素晴らしい人間性と、それぞれに違った味わいの言語感覚をお持ちであり、句会や飲み会で話すとたいてい面白いのであるが、共通した問題点がある。それは当たり前のことだが、深い浅いの差はあれど、誰もが俳句を知っているということ。

その点で言えば、店主の杉浦さんがまったくの俳句未経験者として、投句、選句、選評に参加してくれたのはありがたかったし、本人も楽しんでくれた様子なのがうれしかった。

未経験者に句会へ参加してほしいというのは、私にとってかなり切実な願いである。
身も心も俳句漬けになって、はじめて見えてくるものもあるに違いないだろうが、そうした全身俳人やその予備軍ばかりで句会をやり続けていると、選の基準や評の方向性が、知らず知らずのうちに均質化していく。そこに風穴をあけてくれる存在として、俳句を知らない人は貴重である。
一度知ってしまうと知らなかった日に戻ることはできないのだし。

今回、杉浦さん以外に地元の方、未経験者、見学者がいなかったのは少し残念なことではあった。
とは言え、はじめての方がいきなり句会に参加するのは抵抗があるとも聞くので、未経験の方を主なターゲットとした句会を考えてみるべきだろうか?
俳句を教えるのではなく、句会を経験してもらう。
あらくれ句会とは別に、そのような句会を企画したとしてニーズはあるだろうか?

さて、第二回あらくれ句会は年も押し詰まった12月27日(土)に実施いたします。(普通の句会をやります。)
年の瀬は皆様なにかとご多忙でしょうが、その日たまたまエアポケットのように予定が空いてしまうといったことがあれば、東京に残された秘境、足立区小台。その片隅にひっそりと佇む魔窟 BRÜCKE にてあらくれてみるのはいかがでしょうか?

◆第二回「あらくれ句会」

・日時:2014年12月27日(土)16時開始予定(お店は12時開店予定)

・会場:BRÜCKE
 都電荒川線: 小台で下車。北に徒歩10分。
 日暮里・舎人線: 足立小台駅下車。隅田川沿いに徒歩10分。
 都バス:「東43 荒川土手行き」小台橋で下車。徒歩1分。

・参加費:無料(1オーダーお願いします。)見学可。

・前日までに5句投句いただきます。(題なし)

・参加申し込み:こちらのリンクより中村まで予約メールをお送りください。
(できれば12月20日頃までにお願いします。)

2014年11月3日月曜日

第一回「あらくれ句会」のお知らせ

色鳥や全身窓のやうに待つ   中村安伸

「豈」55号に寄せた「すべての俳句は不可解である」という文章で、俳句作品の制作を封印したことを書きました。
いろいろあっていつのまにか実作に戻った私ですが、いまのところ、以前ほど自分の向きあっているものへの確信を持てずにおります。手放したものをひとつひとつ拾い上げる過程なのかもしれませんし、以前持っていたつもりでいたのはただの勘違いだったのかもしれません。
ともかく今まで掴んできたと思っていたものをチャラにして、つかまえなおしてみたい。
そして、何をやるべきか、何を求められているかなどとは考えず、ただ自分のやりたいことやろうと思ったのでした。

ひとつは句集をまとめること、これについてはまた詳しく書きたいと思いますが、ひとことで言うと、自分の過去の作品を世界に置き去りにしてもいいと思えたということでしょうか。

もうひとつが句会をはじめること。
実は自分が世話役になって句会を行ったことがほとんどありません。これまでなんの気なしにいろんな句会に出席してきましたが、世話役の方々の苦労はいかばかりであったか、ようやくそのことに思いが至った次第。
それはともかく、単に句会をはじめるということではなく、今回の会場である足立区小台のBRÜCKEというお店(カフェではなく珈琲屋だということですが)で行うということが、私にとって重要です。
店主の杉浦さんは、本格的な珈琲を淹れたり、自分の気になるアーティストを呼んできてライブを行ったり、フリーペーパーを作ったり、そのようなことのすべてを、なによりこの小台という土地で行うことを大切にしているように見えます。
自分からどこかへ出かけていくことも必要でしょうが、縁あって住まいをもうけたこの土地を拠点とし、人を呼ぶ、迎えるということをしたいと思いました。そこでこのお店をお借りすることにしたわけです。荒川と隅田川という二つの河に挟まれた、狭い、特別なものはなにもない土地ですが。

そして、新しくはじめる句会を「あらくれ句会」と名づけることにしました。
この名は徳田秋声の『あらくれ』という小説にちなむものです。小説の冒頭近く、主人公のお島が養家へ預けられるとき、父に伴われて隅田川(当時は荒川)の「尾久の渡し」付近を通る描写があります。(これについてはBRÜCKEに置かれているフリーペーパー「小台マガジン」第二号に少しばかり書きました。)
かつてこの渡し場があった付近に架けられているのが現在の小台橋であり、ドイツ語で橋を意味するBRÜCKEという店名はこの橋から採られたものです。

生理的嫌悪を原動力にしたお島と同じではありませんが、理想や志ではなく、ただこのお店で句会をやってみたいという気持ちのみを元手に、ともかくもスタートしてみたいと思いました。
そして、この小台という土地に打ち込んだ一本の杭に、いろんな人のさまざまな思いが、色とりどりのリボンのように結び付けられていくのを、それがふたつの河を渡ってきた風をはらんで、千切れんばかりにはためくのを見たいと思います。

◆第一回「あらくれ句会」

・日時:2014年11月28日(金)19時開始予定

・会場:BRÜCKE
 都電荒川線: 小台で下車。北に徒歩10分。
 日暮里・舎人線: 足立小台駅下車。隅田川沿いに徒歩10分。
 都バス:「東43 荒川土手行き」小台橋で下車。徒歩1分。

・参加費:無料(1オーダーお願いします。)見学可。

・二句(うち一句は兼題「凩(木枯らし等、表記自由)」を詠み込んでいただきます。)
を11月27日(木)までにメールにてお送りください。

・当日席題句を一句投句いただきます。
なお、席題は19時すぎにTwitter等でも発表しますので、遅れる方はそちらを参照してください。

・参加申し込み:こちらのリンクより、中村まで予約メールをお送りください。
詳細を折り返しメールにてお知らせいたします。

2014年5月1日木曜日

長嶋有×榮猿丸×野口る理トークイベント「春のお辞儀がしやりりと点滅」

すっかりごぶさたの猿丸です。
先日行われた句会ライブ「東京マッハ」で、ひさしぶりに中村安伸さんとお会いしました。ひょっとしてオザケンのライブ以来ではないかと。千野帽子さんもリスペクトする中村安伸、第一句集はいつ出すのか。茂根さんは2011年に第一句集『BABYLON』を、私は昨年末『点滅』を刊行いたしました。残るは安伸、楽しみに待ってます。安伸さんの句集が出たら、盛大にパーッと「haiku&me」でイベントかパーティーを行いたいものです。

つい先日は装幀家、間村俊一さんの第二句集『抜辨天』の刊行を祝う会にお邪魔しました。詩人、歌人、俳人、編集者などなどそうそう顔ぶれ。間村さんを囲んで、楽しい酒を飲みました。角川「俳句」5月号で『点滅』の書評を書いてくださった堀江敏幸さんにお会いできたのもうれしいことでした。堀江さんの文章、ぜひご味読ください。茂根さんの「まひるまを軍歌は過ぎて鳥の恋」の自句自解も載っておりまして、これもすばらしい内容です。村越化石さんの追悼特集もあります。

さて、刊行祝賀会、ではありませんが、刊行記念のトーク・イベントを、長嶋有さん、野口る理さんと一緒に行います。ぜひお気軽に遊びに来て下さい。お待ちしております。


『春のお辞儀』『点滅』『しやりり』刊行記念

ジュンク堂書店 池袋本店
5月10日(土)19:30〜

★入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。
■イベントに関するお問い合わせ、ご予約は下記へお願いいたします。
ジュンク堂書店池袋本店
TEL 03-5956-6111


生歿年つなぐハイフン春の雨   榮 猿丸