2009年8月3日月曜日

アイスキャンディーを毎日食べている。決して噛まない。舐める派だ。正確に言うとしゃぶる派だ。

至福の時である。「ながら舐め」はしない。本を読みながら、テレビで映画を観ながら、電話をしながら……他のことに意識がいっている間に気が付いたらなくなっていたなんてことになったときの、驚きと悲しみ。愛しいものが突然目の前から消えてしまった喪失感に呆然とする。そんなの嫌だ。だから、アイスをしゃぶるという甘美な道程だけを愉しむ。

佐藤文香の句集『海藻標本』に「アイスキャンディー果て材木の味残る」という句がある。句集のなかでいちばん好きな句だ。「果て」がいい。そう、アイスキャンディーの最後は「終わる」ではなく「果てる」なのだ。この「果て」感覚は「しゃぶる派」にしかわからないだろう。


ガリガリ君ぶどう味をしゃぶり尽くし、のこった材木の棒に「一本当り」の焼印が。当たった!

ひとりで食べていないでよかった。ぞんぶんに見せびらかす。当たりマークを、ぐっと、突き出し、携帯電話で写真に撮ってもらう。


しかし、交換に行くタイミングがわからない。というか、四十を過ぎるとさすがに恥ずかしい。こういうとき、堂々と交換できる大人になりたい。とりあえず、机の上に抛りっぱなしにしてある棒を、カバンの中に入れておこう。


  ひるがほや錆の文字浮く錆の中  榮 猿丸

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