2009年10月26日月曜日

『俳句』11月号を自分のことを棚に上げて読む

入院して、ほとんど点滴で過ごしたのに、なぜか体重が10キロも増えていたと、前回書いた。顔がまんまるくなって、瞼も重くなって、体型も思いっきり中年になった。ビーチ・ボーイズの映画「アン・アメリカン・バンド」の、寝間着姿のブライアン・ウィルソンみたいだった。20年以上、体重変わらなかったのに、たった11日間の入院で、10キロ太ったのだ。点滴つづけていたら、ふつう痩せるのに、と周囲から言われ、ふだんどんな食事をしているんだと突っ込まれた。いや、もうめちゃめちゃヘルシーな食事をしているんだ。ポップなお菓子も食ってるんだ。ヘルシーかつポップな食生活なのに。

一週間たって体重をはかったら、7キロ痩せて、61キロになっていた。あと3キロ減れば、もとの体重にもどる。なんだったのだろうか。

『俳句』11月号、角川俳句賞発表を読む。
気持ちいいくらいの相子の圧勝。評価された句が「日盛や梯子貼りつくガスタンク」というのが示しているとおり、全体に手堅い。しっかりした佳句だが、澤の句会だったら、並選だろうなとも思う。いや、けなしているわけではなく、いい意味で力んでいないというか、ホームラン狙いではなく、勝つためにはヒットを重ねて確実に塁に出るという気迫を感じた。まあ、ぼくは相子のホームランを何度もまのあたりにしているから、こういう感想になるわけで……。とにかく、ここまで50句揃えたのがすごい。悔しかったら揃えてみろ、ってことだ。しかも、残塁の山を築くことなく、確実に得点を重ねているのは、正木さんが言われているとおり「1ミリ抜きんでるうまさ」があるから。相子の実力発揮だ。ぼくら澤の仲間からしてみれば、受賞遅せえよ、てなもんだが。

しかし、うまい句をつくれば、冒険してないといわれ、冒険すれば、俳句らしくないといわれ……ま、いいんだけどさ。それにしても、正木さんはブレないなあ。すごいわ。

最後に、正木さんが「文体にある癖などから早く脱皮して、この安定した技術を自信にして、これから思い切って自由にどんどん作っていただきたいですね」と言われているとおり、「小澤實の秘蔵っ子」というレッテルから、どう脱皮するか。期待されてますね。たのしみだ。でもぼくは、この受賞が、すでに「秘蔵っ子」からの脱皮なのだと思う。もう「秘蔵」じゃないもんね。というか、相子が角川俳句賞に賭けていたのは、このレッテルからの脱皮のためだったのではないかとも思う。澤イズムの継承者として、これからもどんどん突っ走ってほしい。

優夢の句は、最後の「野遊びのつづきのやうに結婚す」がよかった。優夢らしい。これはまぎれもなく優夢の句だ。しかもタイトル句。自分でもよくわかっているのだ。取り上げられた「材木は木よりあかるし春の風」や「吐き出せる巨峰の皮の重さかな」も佳句だが、優夢じゃなくてもいい。というか、これらの句で受賞しても俳壇的には何も変わらないと思う。まあ、受賞することに大きな意味があるのだけど。もちろん、こういう佳句があるから候補に残るわけだ。50句の平均点を上げていき、かつ、「結婚す」のような優夢らしい句がいくつかあるということが大切なのだな。言うは易し、だけど。でも、それを期待されているんだ。

興梠さんの作品、とてもおもしろかった。「はこべらや犬に抜かれて抜き返す」「春風や仮設便所を積んで去る」など、好きです。「春の闇より側転でやつて来る」の〈やっちゃった感〉もとてもいい。笑った。この姿勢、ひじょうに共感した。

相子の受賞のことば。選考委員から「わからない」と言われた最後の句の自句自解なのだろう。「わからない」と言われることがわかっていても入れた心意気がいいではないか。よい子は真似しないほうがいいです。

来週は澤の秋季鍛錬会@諏訪。宴会でお祝いだ!

  新米に埋もれ計量カップなる   榮 猿丸


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