2010年4月13日火曜日

俳句は愛   上野葉月

やっぱり『マリア様が見てる』の登場人物では水野蓉子さまが好きです(「やっぱり」って何だよ)。

さてSara句会の参加費が今月から千円になった。所謂「いつか来るとはわかっていたが今日来るとは思わなかった」状態。五百円から千円。実にインフレ率100%である。

さすが常に時代を切り開いてきた炎環若手句会、かたや3%のインフレターゲットでも首を縦に振らない日銀のような組織もあるというのに、100%はすごいとしか言わざるを得ない。それにしても日銀というのはいったい何なのだろう。一応役所の一種なんだろうけど。最近とみに検察への風当たりが激しいけどまだ検察なら何をやりたいのか推測がつこうというものだが、日銀となるともうさっぱりである。あれは一応政府から独立した機関だからもしかしたら役所とは言わないのかもしれないけど何もやらないことがお役所体質の芯だと仮定した場合、日銀こそ役所中の役所だと言えよう。

Sara句会の中核を担っているのは所謂「団塊ジュニア」である。失われた十年(+α)にもっとも苦しめられてきた世代。
デフレというのは即効性の毒ではないので身を切られるような痛みは少ないが経済の常識に沿った場合、長期的なデフレの流す害毒は甚大である。
おおよその企業が収益を下げるので当然人件費削減の圧力が長期に渡ってかかる結果、非正規労働者の解雇や新規採用の減少など主に若い世代へのしわ寄せが激しくなる。この二十年近くの日本経済の状況はまさに若者いじめに終始していたと言っても過言ではない(とはいうものの所謂先進国、ある程度の物質的な豊かさを達成した国では大抵の場合、失業問題とは若年層の問題であるのは否めないのではあるがそれにしても近年の日本はひどすぎると思う)。何か今回の五百円から千円への変更というのは若い世代の社会に対するルサンチマンを感じさせる(それにしても呪詛と漢字で書くのに比してルサンチマンとカタカナで書くとなんとなく救いがあるように感じられるのは何故だ)。

一方短期的に見る場合、デフレは高齢者など貯金で生活している層にとってはプラスに働く。放っておくだけで手持ちのお金の価値が若干増すわけである。
そして俳句人口のほとんどが中高年齢層であることは忘れるわけにはいかない。そういえば最近haiku&meというタイトルを見るとつい貯蓄&ミーと読んでしまう。

そういえば合衆国では個人の預金高の平均がついにゼロを切ったそうだ。アメリカ人があまり貯金しない習慣なのは今に始まったことではないが、それにしても世界唯一の超大国の国民の大半が「日本を代表するワーキングプア」として名高い葉月さんと同等かそれ以上に貧しいというのにはさすがに危機感を覚える。

ソ連崩壊後、たしか二年間で7000%のインフレを見たように記憶している。大雑把に言って物価が70倍程度になったわけである。ルーブルの価値が70分の1になったとも表現可能だ。
ドル崩壊に当たってはどうなのだろうか。70分の1で済むだろうか。まあ神原駿河も言っているように「裸で物を落とした試しなし」なので葉月さんのようにお金に縁のない人間にはどうでもいいことなのだが。もっとも世界一の貯金を抱える日本の高年齢層にとってはまさしく対岸の火事ではない。当のアメリカ人より日本の俳句界のほうがよっぽど大きな影響を受けそうな気もする。

「アメリカ以後」ということが熱心に語られるようになってもう十年以上は経つ。その割に「お金以後」ということについてはあまりビジョンが提示されていないようにも思う。近世以降の金融システムに慣れすぎてしまっているので多くの人が想像力の欠乏に悩まされているのかもしれない。現在のように物は溢れているのに時間とお金はいつも足りないという状態とか世界の多く人々が極端な貧困状態に置かれていることの原因の大半は現行の金融システム(いわば銀行)のせいで、お金さえ流通しなければ多くの問題が解消するのは確かだ。もちろんお金がなくなったところで人間の抱える全ての不幸から自由になるわけはないだろうが、お金のくびきから逃れることは多くの人(特に若者)にとって歓迎すべき事態である。
二三十年ぐらいの短期的なスパンに立ってみれば、なるべく合衆国と距離をとって新興国の市場相手に今まで通り付加価値の高い製品を売って行くことで日本もそれほどの苦境に立たされない可能性もあるかもしれない。ただ長期的には世界が生き延びるにはローカリズムしかないように思う。もっとも私のいうローカリズムとは「可能な限り自給自足、可能な範囲で伝統的な生活習慣遵守」程度の薄っぺらなものなのだが。
いうまでもなく未来なんて誰にもわからないけれど、どう転んでも今後は自殺数は減る傾向を見せるような気がしてならない。犯罪数は増えるかもしれないけど。

白薔薇の花筏かなググレカス  上野葉月

6 件のコメント:

  1. 葉月さま

    御寄稿ありがとうございます。
    しかし、
    此の句、どういう意図でしょうか?反ナチ?喧嘩売ってます?

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  2. 茂根さま、
    ナチは関係ないような気がしますが、作った本人にも意味がわかりません(すみません、葉月にはよくあることです)。

    ただ白薔薇が出てくるのは「水野蓉子さまだったら紅薔薇だろう」という突っ込みが欲しかったからだと思います。私もスカートのプリッツを決して乱さないで登校していた高校時代が懐かしく思える年齢になってしまいました(考えてみると生まれてから一度もスカートのプリッツを乱したことなんてないのですが)。

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  3. 葉月さま

    白薔薇は反ナチですが。まあそれはいいとして、
    ググレカスでもっと完成度の高い句がみたいです。

    ついでにスカートはプリーツです。最近のスカートは
    プリーツを乱す必要もないくらい短いようです。

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  4. 茂根さま、

    >もっと完成度の高い
    うーん、葉月にそれを期待するのは酷なようにも思いますが、最近句会に出る度に「バシレイオス二世」「ググレカス」「春和牛」の句は必ず作るようにしているので、そのうちなんとかなるかもしれません。

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  5. 葉月様

    「ググレカス」って、どういう意味でしょう?

    と、ネットで検索してようやくわかりました。

    誰に訊ねても教えてくれない訳だ。

         (あらかんの老婆ヨリ(*^_^*))

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  6. 七風姿さま、ごきげんよう。わざわざの御検索ありがとうございました。そういえば私の同僚達も口には出さす「ググレカス」と目で語っていることが多いですね。
    二年半前句会に出ると「秋の海」の句ばかり出していた時期があったのですが(私は句会でしか作句しません)、この春は病状が悪化して「バシレイオス二世」「ググレカス」「春和牛」の句ばかり提出しております。「バシレイオス二世」「春和牛」の句はたまに点が入るのですが、「ググレカス」は何度挑戦しても今のところ無点です。

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