「笑っていいとも」のテレフォンショッキングのコーナーで、若いアイドルや女優がゲストのとき、タモリはかならず食べ物の話をする、という話は聞いたことがあったけれど、この前、それをはじめて観た。ほんとに食べ物の話をしていたことに、ちょっと感動した。
これといって共通の話題がないとき、食べ物の話は当たり障りがなく、しかも間が持つ。そればかりか、話が深まれば、その人の個性や性格、生き様まで浮き彫りになることもある。嵐山光三郎の『文人悪食』や『文人暴食』は、作家たちの食癖や嗜好を文献や古雑誌などから丹念に拾い上げ、それらをもとに作家の足跡をたどり、作品を読み直す、食癖から読み解く作家論、近現代文学史となっていて、すこぶる面白い本だが、ここまで行かなくとも、味の裏側にある思い出やエピソードなど、誰でも持っているものだろう。食の嗜好、「好き嫌い」とは、そういうところまで拡がっていくのである。ところが、ぼくは食べ物の好き嫌いがない。苦手なものもなければ、大好物というものもない。とうぜん、それにまつわる思い出もない。つまらない男なのである。
だいたい、好き嫌いという判断基準がわからない。旨いか、不味いか、なのではないか。「そばとうどんどっちが好き?」と聞かれても、不味い蕎麦(うどん)は嫌いだが、旨い蕎麦(うどん)は好きだ、ではないのか。もちろん、そこに食べる側の状況が加味されれば別だが。という話をすると、たいがい場はしらける。つまらない男なのである。
これではいけないと思い、真剣に考えてみた。好きな食べ物。ようやく頭に浮かんだのは、島らっきょうである。島らっきょうか。そうだ、大好きだ。いくらでも食べられる。しかし、一生懸命考えて、島らっきょうか。なんだろう、このさみしさは。
あまりにさみしいので、「好きな果物ベスト3」を考えてみる。考えてみた結果、ぼくの場合、1位「白桃」2位「梨」3位「キウイ」である。だからなんなのだろう。真剣に考えて、満足しているだけに、よけいに、だからなんなのだろう。よくわからなくなってきた。
一方、嫌いなものは、いくら考えても出てこない。「好き嫌いがない」というのは美徳のはずだ。そういうふうに教育されてきたはずだ。でも、なんだろう、「嫌いなもの」がないと、人として欠陥があるように感じてしまう。うすっぺらく、軽く感じてしまう。お前にはポリシーがないのか、自分というものはないのか、「嫌いなもの」がないなんて、どういう人生を送ってきたんだ、お前の人生には何もない、と言われているような気になる。困った。
というわけで、来年の目標は、「嫌いな食べ物を探す」にしようと思う。嫌いなものにめぐりあいたい。「俺これ嫌いなんだよなー」と言いたい。
もうすぐクリスマスだ。しかし、クリスマスの思い出も、とくにない。サンタクロースを何歳まで信じていたか、という話題も、苦手だ。
来年も、うすさ、かるさが売りの、榮猿丸をよろしくお願いします。
クリスマスリースに蜂や汝を訪へば 榮 猿丸
好き嫌いがないのは、つまらないけど幸せ、
返信削除幸せだけどつまらないことなのかもですね。
私は結構好き嫌いが多いのですが、
嗜好の面より体質、アレルギー的な要素が強くって、
トマト・パイナップル・メロンがダメですね。
特にメロンは高級な、美味いものほどダメです。
ノドと舌がぴりぴり痛くなり、呼吸がしんどくなります。
あと、一遍牡蠣にあたってから、
生の海鮮類がやや苦手になりました。
春休さま
返信削除体質的なものはしょうがないですよね。
昨年、サルモネラ菌にあたったんですが、
原因となる食材が特定できず。ただ生牡蠣は今ではわたしもちょっとひるむかも。体調の良いときでないと食べる勇気がありません。
こんにちは。
返信削除この間、蕎麦かうどんか選べる定食を食べた時、ふとこの「嫌いなものを見つけたい」を思い出しました。
(なお私はほぼ迷わず「蕎麦」を選びます。)
『超新撰21』は、ざっと一読して今パラパラと読み返している所です。21人、本当に多種多様、多彩ですね。
お身体だいじに、良いお年をお迎え下さい。
来年は嫌いな食べ物が見つかると良いですね!!
えるさま
返信削除蕎麦好きの友人とある食堂に入ったとき、彼がうどんを頼んでいたので、「蕎麦じゃないの」と聞いたら、「おれは美味い蕎麦しか食べたくない」と言ってたのを思い出しました。キザな奴です。
『超新撰21』お読みくださりありがとうございます。また感想など聞かせてください。
haiku&meにお付き合いくださって、どうもありがとうございます。来年もよろしくお願いします。
良きお年をお迎え下さい。