ソニーのウォークマン、カセットテープ式のものが国内出荷終了となったというニュースを観た。語学の練習用とか会議録音用以外の、つまり音楽用のカセット式ポータブルプレーヤーがまだあったのかということにちょっとおどろいた。
なんて言いつつ、私の世代はものすごくカセットテープにお世話になった。カセットテープ世代である。
大学生の頃、はじめてドライブデートをしたときのこと。彼女がドライブ用に編集したカセットを持ってきた。快晴だったその日にふさわしく、キラキラした、オシャレな選曲。ソフトロックや映画のサントラ、古いR&B、当時流行っていたエル・レーベルなどなど。曲順も考え抜かれている。オープニングが「わんぱくフリッパー」のテーマとかで、完璧な出来映えにぼくは感動した。
ところが、B面の最後、曲が終わったあとにちょっと間があいて、いきなり「デンデロデンデロデンデロレン…」とエレキギターの音が鳴った。「ん?」と思ったが、つまりこれは、「重ね録り」していて、前に録音した曲の最後が残っていたのである。この辺がじつにカセットテープらしい。CDやMDではありえない。
その、それまでのキラキラオシャレな楽曲とはあきらかに異質なエレキの音に、車内の空気が一瞬固まった。助手席からも(あっ…)という声にならない気配が感じられた。が、とくにそのことに触れることもなかった。たしかに違和感があったが、たんに重ね録りした、というだけのことだ。
デートから帰宅して、その日の夜。布団の中で「デンデロレン」がふとよみがえってきた。そういえば聴いたことあるな、この音。なんだっけな……と考えるとはなしに反芻していたら、はっと気づいた。まさか……いや、間違いない。
それは、「太陽にほえろ!」のオープニングテーマの、最後のギターの音だった。
土曜日に生放送で行われたNHKBS2「俳句日和」を観る。観ているだけではつまらないのでつい投句してしまった。というか、投句しないと観てられないというほうが正しいか。高柳克弘氏の選に入り、丁寧な評をいただき感謝。もちろん名前を変えて投句した。こういう場合、選ばれると申し訳ない気もする。お題は「曲」。
通勤に聴く曲激し秋の風 榮 猿丸
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