2009年8月17日月曜日

Full of Loneliness

高橋幸宏と鈴木慶一のユニット、ザ・ビートニクスが2001年にリリースしたアルバム「M.R.I」の中に、「Unending Heaven(Full of Loneliness)」という曲がある。この曲名の「Full of Loneliness」は、山頭火の「まつすぐな道でさびしい」の英訳「 This straight road,full of loneliness」から取った、と高橋幸宏が当時のインタビューで語っていた。曰く「アメリカ人にもっとも人気のある俳句」だそうだ。

まつすぐな道でさびしい

じゃ引用しないが、

This straight road,full of loneliness

だったら引用したくなる。たしかに。
よく映画などで観る、ルート66とか、果てのない荒野の中を突っ切るハイウェイの映像が浮かぶ。「Full of Loneliness」というフレーズが、そうした情景を喚起するのだ。そこらへんが、アメリカ人にもイメージしやすいのだろう。ジャック・ケルアックの『路上』なんかも連想させて、ビートニクの詩人が作った俳句だといっても通じそうだ。それにしても、原句と比べると、イメージされる風景はもちろん、空間の大きさから、叙情の質まで、まるっきり違う。原句はなんだか情けない感じだが、英訳句はかっこよすぎるくらいかっこいい。

話は変わるが、ジョン・レノンが俳句に影響を受けたというのは有名な話。インタビューなどでも本人が言っている。だが、具体的にどのように影響を受けたのかがよくわからない。「ジュリア」とか「アクロス・ザ・ユニヴァース」など、ビートルズ後期あたりから、「ラヴ」など、ソロの初期くらいまでの作品が挙げられることが多い。

たしかに、「ビコーズ」や「アイ・ウォント・ユー」や「ラヴ」などは、そのセンテンスの短さに、レノンなりの俳句の影響というものを感じさせる。「ジュリア」あたりも、それまでのレノンの詩に比べると、相対的にだが、イメージとしての俳句の雰囲気がフレーズの端々に感じられないこともない。

しかし、「アクロス・ザ・ユニヴァース」は、芭蕉の句にインスパイアされて作られた、と言われているが、どのへんがそうなのか、さっぱりわからない。詩の世界観が、と言われても、あれはインドのヨガの瞑想体験から来ているのではないか。サビがマントラだし、どう考えても、インドで教えを乞うたマハリシ・ヨギの影響だろう。

ただ、無理矢理捜すと、セカンド・ヴァースが、芭蕉の句への感銘を歌っていると読めなくもない。

Pools of sorrow, waves of joy are drifting through my open mind,
Possessing and caressing me.

「pool」という単語が

古池やかはづ飛込む水のおと

をちょっと思わせる、というだけだが。とにかく資料がない。レノン作品における俳句の影響について、論文とかないかな。読みたい。


  すいかバー西瓜無果汁種はチョコ   榮 猿丸


2 件のコメント:

  1. poolと古池、感じ感じ。です。

    きっと違うでしょうが、感じ感じ。

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  2. tenkiさん

    でしょ、感じ感じです。
    ここで強引に言い張ると面白いんですけど。無理だわ。

    「アクロス・ザ・ユニヴァース」のwikiにも出てたけど、「芭蕉の影響」ってどこなんでしょうね。

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